医師にだけ認められた所得の計算方法がある!?

所得税や法人税の税額は、売上から経費を引いた利益(所得)に税率をかけて計算します。

経費となるのは、材料費や家賃、人件費など、事業を行う上で実際に支出した金額ですが、ここで知っておきたいのが、医師にのみ認められる特別な経費の計算方法。この特例を使うことで、税額を大きく下げられることがあります。

実際の支出にかかわらず経費は同額

租税特別措置法26条(医療法人の場合は67条)で規定される「概算経費の特例」は、実際に使った経費の額に関わらず、一定の計算による金額を経費とすることができる制度です。

同特例は、社会保険診療報酬が5000万円以下で、かつ総収入が7000万円を超えないことが条件です。

概算経費の額は、社会保険診療収入の金額によって決まります。以下に、その速算式を示します。

社会保険診療収入
概算経費
2,500万円以下
72%
2,500万円超〜3,000万円
70% +50万円
3,000万円超〜4,000万円
62% +290万円
4,000万円超〜5,000万円
57% +490万円
5,000万円超
適用なし

概算経費による金額とすることができるのは、社会保険診療収入を得るために支出した経費です。
自由診療による収入がある場合、自由診療にかかる経費は別に計算する必要があります。
社会保険診療収入と自由診療収入、どちらの収入にかかる経費か、はっきり分けられないことも多いでしょう。

このような「共通経費」は、保険診療収入にかかる部分と、自由診療収入にかかる部分を按分して計算することになります

経費削減により大きな節税メリット

概算経費を適用することのメリットとしては、経費を計算するために、支出を証明する領収書を集め、一つひとつ集計しなくても経費の額が計算できるという簡便性があります。
そして、最も重要なことが、所得税あるいは法人税額を低くできるケースがあることです。

たとえば、社会保険診療収入が4000万円の個人クリニックの場合、概算経費の額は、4000万円×62%+290万円=2770円。
仮に、実際に支出した経費が2000万円とすると、概算経費との差額は770万円。
つまり、実質的に所得を770万円圧縮することができることになります。

単純計算ですが、ここで所得税率を50%とすると、770万円×50%で、335万円の節税効果が得られることになります。

特例の適用は計画的に、戦略的に行う

概算経費の適用が有利であると判断した場合には、経費をなるべく節約することで節税効果は高まることになります。

また、保険診療報酬の額が5000万円のボーダーライン付近にある場合、収入を抑え、5000万円を超えないようにする戦略も考えられるでしょう。

クリニックの収益、経費の状況を見て、なるべく早く適用の可否を判断することで、節税の幅が広がります。

もちろん、無理に収入を下げたり、出費すべき支出を削減するといったことがあれば本末転倒でしょうが、無理なく節税できるのであれば、概算経費の特例を使わない手はありません。

ご自身のクリニックで活用できるか、節税の余地がどのくらいあるのか、税理士にも相談しつつ、確認してみてはいかがでしょうか。

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