役立つ節税知識
赤字でも節税できる!? 欠損金繰越控除と繰戻還付
経営は黒字を目指して行うことはいうまでもありませんが、残念ながら赤字になってしまうこともあります。
とくに、イニシャルコストが高いクリニックの経営では、開業直後は患者に認知がされていないこともあり、赤字が続くことは珍しいことではありません。
医療法人に課税される法人税は、黒字の場合にかかるもの。赤字の場合、節税の余地はないようにも思えます。しかし、赤字額をほかの年度の所得から差し引き、税負担を抑える制度があります。
欠損金繰越控除とは?
赤字になった場合に使える税制として、欠損金繰越控除があります。
この制度は、青色申告を行う法人が赤字額を翌年度以降、9年間にわたり繰り越すことができるというもの。平成30年4月1日以後に開始する事業年度からは10年とされます。
つまり、今期の赤字を、将来の所得から差し引くということです。
例えば、今年度1000万円の赤字があり、翌年300万円の黒字が出た場合、繰り越した赤字を差し引き、課税所得をゼロにすることができます。
そして以降の年度も、控除しきれなかった残り700万円を順次差し引くことができ、繰越し期間である9年を過ぎると切り捨てられます。
出資金1億円超などの大きな医療法人については、全額を差し引くことはできず、控除前の所得のうち一定割合に限られます。
この割合は、平成29年4月1日から平成30年3月31日に開始する事業年度は100分の55、平成30年4月1日に開始する事業年度は100分の50となります。規模から考えて、ほとんどの医療法人は全額が控除できると考えてよいでしょう。
欠損金の繰戻還付制度とは?
そして、もう一つ覚えておきたいのが欠損金の繰戻還付制度です。
同制度は繰り越し控除とは逆に、赤字が出た年の前期に発生した所得から赤字額を繰り戻し、法人税の還付を受けられる制度です。
繰り越し控除は、赤字を将来の所得から差し引くものですが、繰り戻し還付は、赤字を過去の所得から差し引き、還付を受けるということです。
還付される金額は、前期の法人税額 x (当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額 )となります。
なお、繰戻還付を利用しても欠損金に残りがある場合、前述の繰り越し控除を利用し、翌年以降に控除することができます。
なお、繰り戻し還付が利用できる法人は、出資金1億円以下などの法人のみです。
業績に合わせ最適な節税策を
繰り越し控除と繰り戻し還付は、赤字が出てしまったときに確実に利用したい制度です。
その際は、今後の所得の予測が不可欠となります。将来的に黒字化が期待できるなら、繰越控除を使い、将来の黒字が見込めない場合や、早く手元のキャッシュを増やしたい場合は繰戻還付を選択したほうがよいでしょう。
今後の展望をもとに、適用について税理士と話し合ってみましょう。
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