承継する方法
クリニック事業承継 成功のカギは早めの対策にあり
ここまで、医療法人・クリニックの事業承継の方法について数々取り上げてきました。
実際の承継では様々な個別の状況があるため、とても全てを網羅したとは言えませんが、基本的な考え方はお分かりいただけたと思っています。
さて、これまでお読みいただいた方の中には、各項目で、繰り返し同じフレーズで注意喚起しているのに気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。
それは、事業承継で最も大切なのは「早めに対策すること」であるということです。
後継者の教育・意識改革を早期に行う
ここまで、親族承継、親族外承継やM&Aなどの手段について、また個人クリニックや医療法人の承継の違い等について説明してきました。その全ての方法で早期対応は武器となります。
すでに子息に後継者がいるため安心していても、本人の意思は固まっているでしょうか。勤務医と院長では心構えが異なり、ある意味での「帝王学」を学ぶ時間が必要です。
また、院長先生がもし亡くなられたとき、遺言などをしていなければ、親族間で遺産分割の争いが起こり、肝心の事業がうまく承継できないかもしれません。
対策の早さが承継の選択肢を広げる
親族に後継者がいないならなおさらです。承継する医師、法人の相手を探す時間が短く、相手が見つからないことでやむなく廃業、という事例は残念ながら多数あります。
M&Aでは、話がある程度進んだ時に破談になることもあります。時間が足りないことで、いわゆる「足元を見られる」状況となり、価格が下がってしまうこともあります。
そのほか、医療法人の持分の問題も整理するには時間がかかります。とくに「持分なし法人」への移行などは数年単位で準備する必要があります。
相続税や贈与税の税務においては、生前贈与などの方法を長期計画で行えば、税額は非常に低くなります。
事業承継のすべての対策は、早く行えば行うほど選択肢が広がるといっても過言ではありません。
院長が元気だからこそ承継計画を
事業承継は、院長が亡くなられてからでは遅いのはもちろん、判断能力が低下しても難しくなります。
しかし、ここに困難があります。医師には定年がないだけに、自分が元気なうちに引退や承継を考える必要がない、ということで引き延ばしてしまうケースがあるのです。
相続や事業承継の計画は、自身の引退、人生の終わりと向き合うことでもあり、なかなか踏み出せないもの。しかし、事業承継を検討することと、医師としてのキャリアを終了することはイコールではありません。
事業承継は遅かれ早かれ必要となります。経営体としてのクリニックの行く末をはっきりさせることは、自分自身の人生を憂いなく、豊かにするためにも必要なことではないでしょうか。
相続・事業承継に強い専門家に相談を
とはいえ、最初は難しく、重く考える必要はありません。まずは家族に、クリニックの幹部に、そして士業など相続や事業承継の専門家に、お考えを話してみることが重要です。
とくに毎月の経営を見て、クリニック、また個人の税務の顧問を行う税理士の役割は大きいと思います。現在契約をしている税理士が、医療機関の承継に強いかどうかということも、今のうちに確かめておくことをお勧めします。
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