承継する方法
親族承継でも安心できない スムーズな承継のために必要なこと

医院・クリニック承継を行う場合、多くの方がはじめに検討するのがご子息等、親族への承継。
親族に医師免許のある人がおり、承継の意思もあるという場合、安心感はあるでしょう。
しかし、親族承継のあてがあっても、しっかりと準備しなければ問題が起こります。親族承継特有のリスクもあるため、クリアしておく必要があります。
そこで今回は、親族承継を確実に成功に導くためのポイントをいくつか紹介します。
承継する方以外の兄弟に対する相続対策
子息等に事業を引き継ぐ場合、事業用資産を引き継ぐことを定める遺言書によることが多いでしょう。
遺言を残しておけば、兄弟がいる場合等でも、事業にかかわる資産を後継者に遺すことができます。
しかし、ここで問題となるのが遺留分の存在です。
遺留分は、民法に定められる法定相続分の半分。これは遺言の内容にかかわらずもらう権利があります。
兄弟の一人に事業用の資産を引き継ぐと、ほかの兄弟の遺留分を侵害してしまい、遺産分割でトラブルになることがあります。
とくに自宅と診療所を一緒に相続した場合などで、兄弟からの遺留分の請求に資金が用意できず。
結局不動産を手放さざるをえなくなることもあります。
また、後継者に対しては、生前なんらかの贈与をしていることも多いでしょう。
被相続人から遺贈や贈与を受けた場合、特別受益として相続分は少なくなります。この特別受益も兄弟間でトラブルになりやすいポイントです。
そして、相続においては、税金の問題もあります。相続税を常に考慮して承継・投資のプランを考え、納税により事業資産を手放すことのないように手当てしておく必要があります。
子息ドクターのアテンド、患者の引継ぎ
自宅で開業していた場合、事業だけでなく、自宅をはじめ生活環境も引き継ぐことになります。
後継者の方は転居が伴うことが多くなりますので、本人だけではなく家族の理解も不可欠です。
親のクリニックを引き継いだものの、生活上の不便のため、あらかじめ検討しておく必要があります。
とくに小さい子供がいる場合は、教育環境についてもチェックしておく必要があります。
承継においては、患者さんやスタッフの存在も非常に重要です。事業承継を実施する前に、十分な理解を得るためには、周知と移行期間を経ることが大切です。
診療科目が親子で異なることも多いでしょう。
既存の患者、また地域のニーズがありますので、できる限り摺り合わせつつ、前院長とつながりがある方々に理解を得る必要があります。
ただし、専門が異なる場合も、無理な非常勤の勤務で埋めないようにすることも大切です。
後継者を信頼し、早めの承継計画を
最後に、親ドクターは、相手が子息だと、口を出したくなるもの。
しかし、任せるところは全面的に任せると割り切ることも大切。成果を確保できる体制づくりに、お互い協力しましょう。
親族に後継者がいることは間違いなくメリットがあります。しかしその状況に安心し、対応が遅れがちです。
引継ぎのプロセスを早いうちから定めておくことは、親ドクターがキャリアを全うするためにも必要なことなのです。
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