承継する方法
医療法人のM&A事情
トラブルを防止するために
医療法人のM&Aは、後継者難にある医院・クリニックにおいて、事業承継先を広く探すことができる手法として注目が集まり、件数は増加傾向にあります。
しかし、第三者に譲渡するという性質上、親族承継とは異なるリスクもいくつかあることに注意すべきです。
今回は、次第に一般化しつつある、医療法人M&Aを成功させるための心構え、そして契約上の注意点などについて解説します。
譲歩すべきは譲歩 信頼関係醸成を
M&Aでは、全くの第三者である承継先との信頼関係の醸成が大切です。価格他の条件で、互いの主張をぶつけるだけではなく「少しずつの譲歩」をすることも必要となります。
そして、決定した権利関係については、承継契約書にまとめることになりますが、法律専門家の意見も聞きながら、なるべく詳細に合意事項を記載することが大切です。
たとえば承継契約では表明保証というものがあります。表明保証とは、契約日や譲渡日等、ある時点における法人の財務や法務に関する事実が正確であることを当事者が保証するものです。
しかし、表明保証は二次的な手当でしかありません。譲渡後に、契約では明示していなかった問題が発生することがあり、紛争が発生、追加出費を余儀なくされることもあります。
承継後に発覚するトラブルとは?
M&A後に起こり得る問題として、例えば以下のようなものがあります。
税務調査
前の体制の法人において、税務処理が不適切であったことから、後に追徴課税や延滞税などが発生することがあります。悪質な場合は、重加算税や刑事罰もありえます。
不正請求
承継元の法人が、保険の不正請求を行っていた場合、法人が返済や処分などの責任を負うことになります。
残業代不払請求
残業手当、休日手当など、労働法制上の義務を怠り、後に問題が発生することがあります。M&Aでは従来の職員等の退職を伴うことがあり、残業代を請求されるリスクは高まります。
医療過誤請求
医療過誤により、患者への損害賠償が発生することがあります。医療過誤は裁判が長期化する傾向もあり、トラブルが尾を引くことになりがちです。
ここで大切なことは、承継する法人に対し、財務・税務だけではなく法務デューデリジェンスを行い、リスクを算定すること。そして、のちに問題が発生したときに備えて、責任範囲をしっかりと決めておくことです。
承継元ドクターも売りっぱなしではなく、承継後の運営に正当な協力をすることが必要でしょう。
法律・税務の適切な専門家への相談を
最後に、M&A成功のカギとなるのは、適切な専門家に相談すること。
当事者となるのは、承継元と承継先ですが、それぞれの当事者には代理人として弁護士等法律専門家が付くことが多くなります。代理人は、医療関連の法令に詳しく、承継実務の経験がある人を選びたいものです。
また、それぞれのドクターの代理人だけでなく、交渉を取り持ち、専門知識をもとに議論を整理してくれるコーディネーターがいれば理想的といえます。
承継元と承継先、弁護士や税理士等の専門家が、協力関係を築くことで、M&Aは成功に導かれるのです。
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