役立つ節税知識
給与の「締日」と税額の意外な関係
個人クリニックや医療法人の従業員の給与の規定で、年度末の締め日が決められることがあります。この場合、締め日から期末の間の労働対価は未払給与となります。
ここで知っておきたいことは、この締め日を何日に設定するかによって、節税としての効果を発揮することがあること。
締め日と税金の意外な関係について解説します。
未払給与を損金に計上できる
給与等の未払計上の要件は、①債務が確定していること、②原因となる事実が発生していること、③金額が明らかであること、の3つとされます。
たとえば、締日が20日の医院では、締め日と期末までには10日の開きがある場合を考えてみましょう。
この10日分の給与は、すでに労働の提供を受けていますので、債務は確定し、金額も明らかです。そのため経理上は、この10日分の給与も経費として計上できます。
3月決算の法人が決算日において未払い計上する3/21~31日までの給与は、お金が出ていっていない状態ですが、税額を低くする方向に働きます。これが実質的に節税の効果を生むのです。
1か月のスタッフ全体の給与額が300万円とすると、3分の1の100万円が未払給与、法人実効税率を30%とすると、締め日の違いだけで、30万円の違いが出ることになります。
締め日による節税の注意点
給与の締め日による節税を行うために大切なことは、就業規則や賃金規定、雇用契約書に計算期間等とともに記載すること。
恣意的に行った処理でないことを説明できるよう、これらの書類を整備しておくことが大切です。
また、一つ注意したいことが、役員報酬。役員報酬は、定期同額給与など、原則的に決まった額を支払わなくては損金算入できず、日割計上が認められていないため、締め日による節税はできません。
あくまで、役員以外の従業員の給与に関する節税方法として理解してください。
締め日を戦略的に設定しよう
締め日の設定は、他の多くの節税方法のように、費用計上のためにキャッシュが出ていかないため、節税策として手軽さがあります。
とくに、スタッフをはじめて雇用する際や、医療法人設立時には、締め日の設定は比較的自由に行えますので、財務的な影響を考えながら、戦略的に設定することをお勧めします。
また、既存のクリニックや医療法人でスタッフを雇用し、締め日に関する規定がすでにある場合も、規定を変えることは不可能ではありません。
就業規則や雇用契約を変更するためには、スタッフの理解、また労働法制上の手続きが必要となりますので、検討する際は弁護士や社会保険労務士等に相談してみてください。
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