承継する方法
医療法人承継のタイミングを税金から考える
現在、医療法人の大半は持分がある法人です。そのため、承継の際には持分を後継者に引き渡す必要が生じます。
そこで考えておくことの一つに、承継時の税金があります。相続や贈与の際の課税、また譲渡益の課税などについて、難しい税法の規定や計算は抜きにして、皆様に理解しやすいように解説していきます。
医療法人の持分の相続と贈与
持分のある医療法人の相続では、出資持分の大半を所有する創業者が亡くなった場合、相続税額が大きくなり、スムーズな承継が困難になることがあります。
持分のある医療法人は多額の剰余金が留保されている場合が多く、持分の評価額が高くなることが原因です。
急な相続の発生で困らないために、後継者と目している親族がいる場合、生前に持分を引き渡しておくことが検討対象となります。
生前に持分を引き渡す手段として、無償での贈与があります。
しかし、贈与には贈与税がかかります。贈与税は一般に相続税よりも高くなります。
ただし、1年110万円までの贈与には贈与税がかかりません。時間がかかりますが、この非課税枠を利用し、少しずつ移行させることも考えられるでしょう。
なお、相続時精算課税といって、贈与した年に贈与税を課税せず、相続発生時に相続税により精算する方法もあります。
どちらが有利であるかは、将来の業績その他の状況により異なりますので、税理士を交えシミュレーションしたいところです。
持分を売却した場合の所得税は?
相続や贈与の他、持分を引き渡す方法として、後継者に持分を売却して対価を受け取る方法があります。その場合、売却益には所得税がかかります。
ここで重要なことは、現在、受け取っている医療法人からの役員給与と、株式を売却する場合の税額を比較して、どちらが有利か検討することです。
じつは所得税は、今後、重税となる可能性がかなり高いといえます。
平成27年度からは、所得税+住民税の最高税率が、55%となるなどの増税が行われています。
しかし、株式や持分等を売却して得た所得に対する所得税は、税率は一律。売却額 – 出資額 × 20%(所得税・住民税)となっています。
たとえば、出資額3000万円の持分を1億円で売却したとします。
税額は、売却額1億円 – 出資額3,000万円 = 7千万円 × 20% = 1,400万円。手取額は8,600万円となります。
理事長として働き、給与として受け取った場合と、持分を譲渡して第一線を退いた場合の税額の差を検討し、承継計画を立てることが重要です。
法人が順調なうちに早めの対策を
持分の処分を検討する際に最も大切なポイントは、なるべく早期に計画を立てること。
贈与するにしろ売却するにしろ、早い対応が、選択肢を大きく広げます。
法人が良い状態で運営できている時こそ、また現在の理事長がまだまだ元気なうちだからこそ、引継ぎについて本格的に検討すべきなのです。
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