事業計画
開業前に知っておきたい「損益分岐点」の基礎知識
人件費・家賃などの支出が多い「固定費型」であるクリニックは、いわゆる損益分岐点が高くなりがちだといわれます。
この損益分岐点の概念、皆さん適切に理解しているでしょうか。
経営者として大切なことは、クリニック事業の利益構造を損益分岐点の観点から理解し、事業計画策定に活かすことです。
損益分岐点と固定費・変動費
損益分岐点とは、端的には売上高から費用を差し引いた利益が「ゼロ」となる売上高のことです。
損益分岐点を超える売り上げを挙げれば黒字であり、損益分岐点未満であれば赤字となります。
ここで、損益分岐点を考えるにあたりで重要なのが「固定費」と「変動費」の概念です。
まず固定費とは、人件費や家賃のように売上高にかかわらず定額でかかる費用、変動費は、材料仕入のように売上に応じて比例的に増える費用です。
ここで2つのグラフを見てください。これは「固定費の割合が高い業種」であるクリニックと、「変動費の割合が高い業種」である小売業の利益構造を単純化したモデルです。
固定費は、横軸の売上高が上がった場合でも一定なので水平な線となります。
これに対し、変動費は売上高に比例して高くなるので、総費用は水平線の上に、右上がりの線を乗せた高さで示されることになります。
そして、売上高と総費用が交わる点が損益分岐点となります。
クリニックの損益分岐点が示すもの
上のグラフからわかることは、「固定費型」であるクリニックは、固定費をまかなうための必要な売上額が大きくなりがちで、損益分岐点が高くなることです。
つまり、小売業などの「変動費型」の事業と比べて利益を出すための売上が多く必要で、一定レベルの収入を確保するまではずっと赤字が続いてしまう特性があるということです。
したがって、固定費はできるだけ抑え、損益分岐点を下げることが非常に重要となります。
ただし、グラフからは固定費型の事業の別の側面も見えてきます。
たとえば、5000万円を超える売上をあげた場合をみてください。
小売よりもクリニックのほうが売上高と総費用の差が大きく、利益が大きく出ていることがおわかりいただけると思います。
変動費型の事業は、利益を出すのは比較的簡単といえますが、1単位の売上当たりの利益(限界利益)が低く、いわゆる「薄利多売」になりがちです。
一方、固定費型の事業は損益分岐点が高く、利益が出るまでは大変ですが、限界利益が高く、損益分岐点を超える売上を上げられるようになると、そこからは大きく儲かる傾向があるのです。
損益分岐点を意識して事業計画を策定しよう
開業には様々な不安がありますが、どのぐらいの患者さんが来院すれば成り立つのか、またどのぐらい利益が出るのかの点は非常に大きな要素であると思います。
事業の収支の構造を大まかにでも理解し、自院の損益分岐点から導き出される必要な患者数や診療単価を認識したうえで、事業計画における固定費を見直していく過程は必須であり、また目標値が明確になることで行動がより明確になります。
損益分岐点の概念は、経営者としての意識を高めてくれるツールとなることから、必ず把握しておきたいものです。
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