事業計画
キャッシュフローはクリニック経営の命綱
事業計画の重要な目的は、クリニック運営における「キャッシュフロー」を見通すことにあります。
経営を行ううえで必ず知っておきたいのは、資金繰り=「キャッシュフロー」と収益と費用の差である「利益」とは別に考えるべきだということです。
今回は「手元現金増減の見通し」、つまりキャッシュフローの重要性についてお話していきます。
黒字倒産はなぜ起こるのか?
皆様は、クリニックに限らず「事業が破たんする」のはどのような時だと思いますか?
「利益が出ず、赤字続きになった時」でしょうか。
たしかに間違ってはいません。
赤字が続けば、いつか事業は立ちいかなくなるのは確かですが、破たんの直接的な原因は、じつは赤字ではないのです。
もし赤字(収支がマイナス)だとしても、銀行融資などで手元にキャッシュが確保できれば事業を継続することはできるからです。
倒産するのは、手元にお金がなくなり、借りたお金を返せなくなった時、また取引先への支払い、従業員への給与など、支払うべきお金が支払えなくなった時です。
事業は、赤字が続いていても必ずしも倒産しませんが、逆に利益が出ているにもかかわらず手元のキャッシュが少なくなり、事業継続が難しくなることがあります。
いわゆる「黒字倒産」です。
経営においては、利益だけではなく、キャッシュフローが命綱なのです。
利益とキャッシュの違いを作る正体
では、利益とキャッシュフローとの間に違いが出るのはなぜなのでしょうか。
大きな原因の一つが「医業未収金(売掛金)」です。未収金=売掛金とは入金されていない売上代金のことで、この額が大きいと利益(売上)があっても、お金がない状態になります。
クリニックにおいては保険収入が主だった収入源となりますが、この保険診療報酬は診療から入金まで最長で約3か月のタイムラグがあります。そしてその間に生ずる様々なコストは窓口収入を含む手元資金で賄わなければなりません。
特に開業後、患者が少ない時期が続くと運営は赤字となり、資金残高は減少しますが、逆に軌道に乗って患者さんが増え、利益が出てきたときに丁度お金が底をつくということもあり得るわけです。
もう一つの要因として、設備投資や在庫が挙げられます。
高額な医療機器などを購入した場合、一旦資産として計上したうえで毎年「減価償却」の方法で毎年分割して経費化されます。
つまり、対価の支払いはあるものの収支計算上は一部しか経費とならず、その分利益が減らない形となります。
また、医薬品や診療材料の未使用在庫は診療収入を上げるために使われておらず、原則として資産計上となりますが、すでにお金は出ていってしまっています。
したがって、設備投資を行う場合や薬品等のまとめ買いをする際には、それらは一時的にキャッシュフローを悪化させる要因となることをよく認識して意志決定することが必要です。
当初2年間の事業計画はキャッシュフロー最優先で
見切り発車の開業で、利益が出るという明るい見通しのもと、キャッシュフローを軽視して資金不足に陥るケースがあります。
特に設備資金の返済やリースについて、レートは気にするものの返済のタイミングや支払期間等を考えずに設定しているケースでは、開業当初のキャッシュフローが一気に悪化していきなり運営がピンチに、ということも考えられます。
キャッシュフローを重視した事業計画書を作成することで、最も脆弱な開業当初の時期に資金不足となるリスクを未然に防ぎ、また開業後の実績を重ねることで「このままでは資金が足りなくなる」等の予測が立ち、早めの対策を打つこともできます。
事業計画は、取り返しのつかない失敗を予防するためのツールになってくれるのです。
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