役立つ節税知識
医院・クリニックは「簡易課税」で得をする?
消費税の税額を計算するためには、受け取った消費税と支払った消費税の額を正確に計算する必要があり、実務はかなり複雑です。
そこで、消費税には、仕入税額の計算を簡単にできる簡易課税という方法があります。
節税としても有効なことがあるため、簡易課税制度の概要、ポイントを知っておきましょう。
簡易課税の概要 みなし仕入れ率とは?
簡易課税は、基準期間における課税売上が5000万円以下の事業者が利用できる税額の計算方法。
医療機関は、消費税が非課税である保険診療が収入の柱となる場合がほとんどであり、課税売上が少ないため、簡易課税を適用できるクリニックが多いといえます。
原則、課税売上から控除される仕入税額は、支払った消費税額を一つひとつ、すべて足して計算しますが、簡易課税では、課税売上高に「みなし仕入率」をかけた金額に消費税率8%をかけて計算できます。
現在、このみなし仕入率は業種ごとに90%から40%の範囲で決められ、病医院の業務については第五種事業(サービス業等)の50%となっています。
【みなし仕入率】
- 第一種事業(卸売業)
- 90%
- 第二種事業(小売業)
- 80%
- 第三種事業(製造業等)
- 70%
- 第四種事業(その他の事業)
- 60%
- 第五種事業(サービス業等)
- 50%
- 第六種事業(不動産業)
- 40%
たとえば、消費税の課税売上が4000万円ある場合、これに50%を掛けた2000万円を控除した2000万円が、消費税がかかる仕入額とみなされ、消費税率の8%をかけた160万円を納税することになります。
なお、院内で物品販売をする場合など、複数のみなし仕入れ率の区分を使用することもあります。
節税効果もシミュレーションして適用
簡易課税は、税務が簡便になるというメリットのほか、節税効果も期待できます。
クリニックの支出で、消費税が課税されるものとして医薬品や備品等の購入がありますが、最も割合が高い人件費、つまり給与には消費税は課税されません。
クリニックは、消費税が課税される支出が多くない業種といえ、みなし仕入れ率を使って支払い税額を計算したほうが税額でも有利になる場合が多いのです。
もちろん個別の施設により大きく違いはあり、大きな投資をした場合など、支払う消費税が高くなり、簡易課税が不利になることもあります。
簡易課税は一度選択すると、2期は変更することはできませんので、適用は慎重に選択する必要があります。
医療法人、個人クリニックでは、簡易課税をすでに適用しているところも多いでしょう。
しかし、何らかの理由で本則により計算している場合で、切り替えたほうが有利になっていることがあります。
税理士に相談しながら、本則課税と簡易課税の税額を比較・検討するとよいでしょう。
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