事業計画
クリニックの開業エリア・場所選びは何を見るべき?
理想のクリニック経営のために決定的に重要となるのが、「どこで開業するか」。
順調な集患が期待でき、また自院のスタイルに適合する土地を選ぶことが肝心です。
今回は、クリニックを開業する地域(エリア)、そして周辺環境(ロケーション)に焦点を当て、開業場所選びの基本を解説していきます。
都市、郊外、エリアの特徴を捉える
親子承継などで、地縁のある場所で開業する場合以外は、市町村などのエリアを一から選ぶ必要があります。
エリアの類型、特徴は、決して単純に語れるわけではありませんが、まず基本的な分け方として、「都市か郊外か」があります。
「都心型」のメリットは利便性。いわゆる「職住近接」で、人口つまり患者の対象が多く、職員を雇用する際も人を集めるのが比較的容易です。
しかし、同様に競合も多くなり、人件費やテナント料の高さがネック。保険診療の料金は全国一律であるだけに、コスト高は利益率に大きく響きます。
「郊外型」の特質は、都心型の裏返しといえます。
人件費やテナント料が低く、競合が少ないのがメリット。自動車の利用が多いため診療圏が広く、評判を呼ぶと遠方からも患者が訪れ、非常に大きな利益を上げられることがあります。
しかし、通勤の不便さや、人が雇いにくいことがデメリット。
また、老齢人口減少など、地域の今後の展望についても考えておくべきでしょう。
都心部開業 | 郊外型開業 | |
---|---|---|
メリット | 利便性が高い ・生活面・教育面 ・研修等スキルアップ面 人口が多い・増加している 老年人口の増加が見込まれる |
競合が比較的少ない →立ち上がりが早い 診療圏が広い 運営コストが安く利益率が高い 自己所有物件で開業可能 |
デメリット | 競合が多い 診療圏が狭い 運営コストが高く利益率が低い ・土地、家賃等 ・人件費 |
生活、通勤に不便 直接得られる情報が少ない 職員採用が難しい 老年人口が停滞 →人口減少も現実に |
さらに詳細なロケーションを分析
エリアの次に、予定地の周辺環境を考えます。大きな分け方としては、「駅前立地か、住宅街立地か」があります。
駅前のメリットは、通勤通学者、また商業施設への様々な属性の人が集まることがあります。働く側にとっての利便性も高くなり、スタッフ募集もしやすいでしょう。
一方で、デメリットとして挙げられるのはやはり家賃や駐車場、人件費の高さ。また、既存の院だけではなく、新規の院との競合も激しくなります。
住宅街は、独立した圏内で住民と長く付き合い、かかりつけ医として安定した経営が望めるのがメリット。家賃は比較的安めで、損益分岐点を超えやすい特徴もあります。
デメリットとしては、認知されるまでには時間がかかること、駅利用のスタッフの雇用が難しいことがあります。
通勤や買い物や銀行対応などの利便性が著しく低いことや、調剤薬局がない場合があることも考えられますので、開業前に必ず確認しておきたいところです。
駅前立地 | 住宅地立地 | |
---|---|---|
メリット | 利便性が高い 人が集まりやすく急患に有利 テナント物件が見つけやすい 通勤し易く採用に有利 調剤薬局との連携が容易 |
競合が比較的少ない 独立した居住圏から来院がある 近隣の採用がしやすい 運営コストが安く利益率が高い |
デメリット | 競合が多い(将来も) →競合に勝つ優位性が必要 運営コストが高く利益率が低い 目立つ店舗が多く埋没しがち |
運営、通勤に不便 駅利用の職員が採用しづらい 認知されるまで時間がかかる 適当なテナント物件が見つけづらい 近隣に調剤薬局がない場合がある |
診療圏調査は信頼できるか?
クリニックの開業時には、コンサルタントらにより「診療圏調査」が行われることがあります。
これは、開業地を中心に地図上に円を描き、人の行動範囲内の人口に受診率をかけて患者数を予測するものです。
専用ソフトウェアなども販売されており、ツールさえあれば、一応の結論を出すことは簡単です。
しかし、過信は禁物です。調査予測と全く異なる結果が出る場合も少なくありません。
単純な診療圏調査では表れない要素として、競合の存在、都市計画、マンション計画の存在、昼間人口と夜間人口の違いがあります。
また河川や線路、学区などの境に、地図上には表れない社会的、心理的な壁が形成されていることもあります。
診療圏調査は参考として大いに役に立つものですが、実情に応じ補正が必要です。経験の深いコンサルタントに依頼し、多角的な情報収集、分析を心がけましょう。
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